業務でタクシーを利用した際、経費精算に欠かせないのが領収書です。降車時に受け取るだけの書類に見えますが、宛名の扱いや再発行の可否、インボイス制度との関係など、押さえておきたい点は少なくありません。
本記事では、現金やクレジットカード、配車アプリ、タクシーチケットといった支払い方法別のもらい方を整理したうえで、記載内容の見方から、法人でまとめて管理する方法まで解説します。
タクシーの領収書をもらう方法
領収書の受け取り方は、支払い方法によって変わります。現金・クレジットカード、配車アプリ、タクシーチケットの3つに分けて見ていきましょう。
| 支払い方法 | 領収書の受け取り方 | 経費精算での扱い (利用者) | 経費精算での扱い (経理) |
|---|---|---|---|
| 現金・クレジットカード | 降車時に乗務員から受け取る | 1件ごとに処理・提出 | 1件ごとに処理・保管 |
| 配車アプリ | アプリの利用履歴から発行・ダウンロード | 1件ごとに処理・提出 | 電子データのまま保存 |
| タクシーチケット | 受け取りも可能。保管しない運用も選べる | 対応なし | 月次の請求書で処理 |
車内で現金やクレジットカードで支払う場合
車内で精算する場合、領収書は降車時に乗務員から受け取ります。領収書はメーターと連動した車載のプリンターから印字されます。通常は渡されるのが基本ですが、精算のタイミングで申し出ると確実です。
旅客自動車運送事業運輸規則第10条第2項でも、旅客から求めがあったときの領収証の発行が、タクシー事業者に義務づけられています。
クレジットカードで支払った場合は、タクシー会社の領収書とカード会社の利用明細が別々に渡されることもあります。仕入税額控除に用いるのは、タクシー会社が発行した領収書のほうです。
配車アプリで決済する場合
配車アプリで決済する場合、降車時に運賃が確定し、事前に登録したクレジットカードなどで自動的に支払いが完了します。車内でお金を払わないため、乗務員から領収書を受け取ることもありません。
領収書は、アプリの利用履歴から利用者が自分で発行します。取得できる期間はアプリによって限られているため、月内に処理しておきましょう。
なお、アプリから取得した領収書は電子取引のデータにあたります。電子帳簿保存法上、印刷した紙だけで保存する扱いは認められていないため、データのまま保存することが必要です。
タクシーチケットで支払う場合
タクシーチケットで支払う場合は、所定の欄に記入したチケットを乗務員へ渡すだけで精算が完了します。記入欄の有無や書き方は発行元によって異なります。チケットで支払った場合も、申し出れば領収書を受け取ることが可能です。
利用分は発行元がまとめて集計し、月次の請求書として契約企業に届くため、社員が立て替える必要はありません。経理処理はこの請求書1通で完結するため、領収書を保管・提出しない運用も選択肢の1つです。一方で、請求書の内容と実際の利用を照合する目的で、領収書を受け取るようにしている企業もあります。
関連記事:タクシーチケットとは?仕組みや使い方、メリットを解説
関連記事:タクシーチケットの購入方法は?法人向けの買い方とどこで買えるかを解説
タクシーの領収書に記載される内容と未収書の扱い
タクシーの領収書に印字される項目は、車載のプリンターや支払い方法によって異なります。また、クレジットカードやタクシーチケットなどで支払った場合は、領収書ではなく未収書が渡されることもあります。
それぞれの記載内容と、経費精算での扱いを確認しておきましょう。
領収書に記載されている内容
タクシーの領収書は、車載のプリンターから自動で印字されるレシート形式のものが基本です。レシート形式であっても、税法上は金銭の受取書として扱われるため、経費精算での効力に問題はありません。

印字されるのは、利用日、金額、タクシー会社名、車両番号(無線番号)などです。適格請求書発行事業者が交付する場合は、登録番号の記載も必須です。連絡先や、乗車時刻と降車時刻を印字するかどうかは、車載のプリンターによって差があります。
高速道路の料金や迎車料金がかかった場合は、運賃とは別に内訳が出る形が一般的です。忘れ物をした際の問い合わせでは、車両番号と利用日時が手がかりになります。降車後すぐに処分せず、手元に残しておきましょう。
配車アプリからダウンロードする領収書は、タクシー会社名や車両番号が記載されない場合もあり、車内で受け取るものとは記載項目が異なります。
後払いの決済で渡される「未収書」とは
クレジットカードやタクシーチケット、アプリ決済など、その場で現金をやり取りしない支払い方法では、領収書ではなく「未収書」と記載された控えを渡すタクシー会社もあります。
未収書は、運賃が後日精算される取引であることを示す書類です。金銭の受領を証明する領収書とは性格が異なるため、未収書だけでは経費精算の証憑として認められないケースもあり、控えとして保管する位置づけになります。
すべてのタクシー会社が未収書を発行するわけではないため、取り扱いは会社ごとに確認が必要です。
タクシーの領収書をもらうときの注意点
タクシーの領収書を経費精算に使う際に、押さえておきたい点が4つあります。以下を確認しておきましょう。
- 宛名は記載されないのが一般的
- 配車アプリで決済したときは車内の領収書を使わない
- 領収書は再発行されないため、なくしたときは代替書類で対応する
- 日付は降車時刻を基準に記載される
宛名は記載されないのが一般的
タクシーの領収書はレシート形式のものが多く、そもそも宛名欄がないか、あっても空欄のまま渡されるのが一般的です。適格簡易請求書は「書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称」の記載が不要とされており、宛名がなくても仕入税額控除の要件を満たせます。
ただし、社内規程で会社名の記入を求める企業もあり、社内の取り扱いは消費税法上の要否とは別です。
なお、宛名欄が印刷される車載器を搭載していない車両も多く、乗務員に記入を依頼しても対応できないことがあります。
配車アプリで決済したときは車内の領収書を使わない
配車アプリで決済した場合も、車載の発行機からは紙の領収書が出力されます。ただし、乗務員はこの領収書を渡さない運用が一般的です。
理由は2つあります。1つは、アプリから発行される領収書と重複し、二重発行になるのを防ぐためです。もう1つは、クーポンや事前確定運賃(乗る前に運賃が決まる仕組み)を使った場合、車内の領収書に印字される金額と実際の決済額が食い違うことがあるためです。
経費精算に使う領収書は、アプリから発行したものに統一しましょう。
領収書は再発行されないため、なくしたときは代替書類で対応する
一度発行した領収書の再発行は、原則として行われていません。同じ乗車に対して領収書が2枚存在すると、経費の二重計上につながるおそれがあるためです。
なくした場合やもらい忘れた場合は、タクシー会社へ問い合わせると、乗車記録をもとに乗車証明書などの代替書類を発行してもらえる場合があります。その際は、利用日時、乗車区間、車両番号といった情報が必要です。
車両番号は領収書にしか印字されていないことも多いため、紛失後に車両を特定するのは難しくなります。領収書を受け取った時点で撮影しておく方法も有効です。
日付は降車時刻を基準に記載される
深夜に乗車して日付をまたいだ場合、領収書には降車した時点の日付が印字されるのが一般的です。そのため、残業した当日の経費として申請すると、申請日と領収書の日付が1日ずれる場合があります。
乗車時刻や降車時刻まで印字される機器であれば、深夜に利用したことを領収書から読み取れるため、大きな問題にはなりません。時刻の記載がない場合は、精算書の備考欄に利用した時間帯を書き添えておく運用が有効です。
日付をまたいだ経費の扱いは会社の規程によって差があるため、深夜の利用が多い部署では運用を決めておきましょう。
タクシーの領収書とインボイス制度の関係
インボイス制度のもとで、タクシーの領収書がどのように位置づけられているのかを、2つの観点から見ていきましょう。なお、制度に関する記述は2026年10月時点の内容です。
タクシーの領収書は適格簡易請求書として扱われる
仕入税額控除を受けるには、原則として適格請求書の保存が必要です。ただし、不特定多数を相手にする小売業や飲食店業、タクシー業などでは、記載事項を一部省略した適格簡易請求書を交付できます。
タクシーで受け取る領収書は、この適格簡易請求書にあたります。
適格請求書で求められる「書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称」が不要とされているため、宛名が空欄でも控除の要件を満たせる形です。確認したいのは登録番号の印字で、記載がない場合は、適格請求書発行事業者として登録していない可能性があります。
タクシーは公共交通機関特例の対象外
インボイス制度には、3万円未満の運賃であれば帳簿の保存のみで控除を認める公共交通機関特例があり、対象は船舶、バス、鉄道による旅客の運送に限られます。タクシーはこの特例に含まれていないため、金額の大小にかかわらず領収書の保存が必要です。
一方、基準期間の課税売上高が1億円以下、または特定期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者には、税込1万円未満の課税仕入れを帳簿の保存だけで処理できる少額特例が設けられています。少額特例の適用期間は、令和11年9月30日までです。
発行元ごとのインボイス対応の違いは、以下の記事で解説しています。
関連記事:タクシーチケットはインボイス対応している?発行元ごとの違いと経理処理を解説
法人でタクシーの領収書を管理する際の負担と減らし方
タクシーの利用件数が多い企業では、領収書の管理に毎月多くの時間を取られがちです。法人で起きやすい課題と、支払い方法の見直しによる解決策を見ていきましょう。
立替精算と領収書の回収に工数がかかる
社員がタクシー代を立て替える運用では、領収書の提出を前提に精算が進みます。提出が遅れれば経理担当者による催促が発生し、紛失すれば代替書類の作成も必要です。
経理側では、受け取った領収書を1枚ずつ確認し、適格請求書発行事業者の登録番号があるかどうかで仕訳を分ける作業が生じます。
登録番号のない分は経過措置※の対象として別に扱うため、仕訳の手間はさらに増えます。作業量は利用件数に比例して増えるうえ、月末や期末に処理が集中しやすいのも難点です。
※経過措置:適格請求書発行事業者ではない事業者(免税事業者など)からの仕入れでも、一定期間は仕入税額相当額の一部を控除できる制度。控除できる割合は、期間に応じて段階的に縮小する。
支払い方法を見直すと領収書の管理を月次にまとめられる

後払い方式に切り替えると、利用分は月次の請求書でまとめて契約企業に請求されるため、立替と領収書の回収という流れそのものを変えられます。
経理担当者が扱う書類が請求書1通に集約されるため、利用件数が増えても処理の工数は一定に保てます。
社員側も、領収書を保管して提出する手間がかかりません。請求内容を照合したい企業は、領収書を受け取って突き合わせる運用も選べます。
後払いにする手段は1つではなく、申し込みの流れや使えるタクシーの範囲は手段ごとに異なるのが実情です。詳しくは以下の記事で解説しています。
関連記事:タクシー料金は後払いにできる?法人向けの方法と確認事項を解説
関連記事:タクシーチケットの種類とは?それぞれの違いと選び方を解説
タクシーの領収書に関するよくある質問
最後に、タクシーの領収書について問い合わせの多い3つの質問に回答します。取り扱いは事業者ごとに差があるため、判断に迷う場合は利用したタクシー会社に確認しましょう。
個人タクシーでも領収書はもらえますか?
個人タクシーでも領収書は発行されます。旅客自動車運送事業運輸規則の発行義務は一般乗用旅客自動車運送事業者に課されており、法人タクシーと個人タクシーで区別はありません。
ただし、インボイス制度の適格請求書発行事業者に登録しているかどうかは事業者ごとに異なります。仕入税額控除を受ける場合は、領収書に「T」から始まる13桁の登録番号(インボイス番号)が印字されているかを確認しましょう。
クレジットカードで支払った場合も領収書はもらえますか?
クレジットカードで支払った場合も、タクシー会社が発行する領収書を受け取れます。カード会社が発行する利用明細とは別の書類であり、仕入税額控除に用いるのはタクシー会社の領収書のほうです。なお、タクシー会社によっては、領収書ではなく未収書を渡す場合もあります。
領収書に但し書きは記載されますか?
タクシーの領収書は車載のプリンターから印字される形式のため、但し書きを記入する欄が設けられていないものがほとんどです。適格簡易請求書に必要な記載事項のうち取引内容は運賃として印字されるため、但し書きがなくても仕入税額控除の要件を満たせます。
まとめ
タクシーの領収書は、支払い方法によって受け取り方が変わります。宛名が空欄でも控除の要件は満たせる一方、再発行は原則として行われていません。
利用件数が多く、領収書の回収や仕訳に時間を取られているなら、支払い方法の見直しが有効です。愛のタクシーチケットには、次のような特徴があります。
- 全国の加盟タクシー会社で利用でき、出張先でも同じチケットで精算できる
- 媒介者交付特例により、加盟タクシー会社に代わって適格請求書を発行する
- 月次の請求書1通に集約され、領収書を1枚ずつ管理する必要がない
- チケット利用明細に乗車したタクシー会社が記載され、忘れ物の問い合わせ先を後から確認できる
導入の検討段階でのご相談や、見積もりのご依頼も受け付けております。下記のフォームよりお問い合わせください。
